底地・借地権に関するよくある質問
底地(貸地)・借地権に関する「よくある質問」
底地(貸地・貸宅地)・借地権に関して「よくある質問と回答」をまとめました。
底地・借地権にまつわる諸問題で悩まれている多くの方の疑問にお答えします。 底地・借地権に関するトラブル解決、トラブル防止にお役立て下さい。
【借地権等の相続に関する質疑】
【借地上の建物に関する質疑】
- 借地上の建物を建て替えるとき、地主の承諾が必要か。建替え承諾料は?
- 借地上の建物が滅失した。借地権は消滅するか?
- 建物の軽微な改修でも地主の承諾が必要か
- 借地権者と借地上の建物の名義人が異なる場合の借地権の対抗力
【借地権の更新に関する質疑】
【借地権の売買に関する質疑】
【借地権の地代に関する質疑】
【その他の底地・借地権に関する質疑】
Q:借地権は相続できるか
例:父が父所有の借地上の建物に一人で暮らしています。高齢のため最近は病気がちなのですが、父が亡くなった場合、借地権はどうなるのでしょうか。
息子である私が相続できるのでしょうか。母は数年前に亡くなり、子は私と妹の二人です。相続できるとした場合、地主の承諾は必要でしょうか。
Ansewer
借地権者が死亡したときは、借地上の建物の所有権は相続人のものとなり、それに伴って借地権も相続人に移転します。ご質問のケースは、あなたと妹さんが法定相続人ですので、お二人にお父様の借地権を相続する権利があります。
また、民法896条に「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と規定されていますので、相続による借地権の移転については地主の承諾を要しません。相続開始後に地主から借地権の名義書換の承諾料を要求されて、応じてしまうケースがありますので、注意して下さい。
ただし、贈与(遺贈を含む)による借地権の移転の場合は地主の承諾を要します。
Q:底地は物納できるか
例:父が亡くなり、かなりの不動産を相続しましたが、現金が少ないため、相続税の物納を考えています。
相続した土地の多くは貸し付け中の土地(いわゆる底地・貸宅地)ですが、このような財産でも物納することができるのでしょうか。
Ansewer
貸し付け中の土地(以下「底地」といいます)であっても、一定の要件を満たせば、物納することができます。
底地を物納する場合は、土地を物納するときに共通して求められる書類の他、「土地賃貸借契約書(写し)」「賃借地の境界に関する確認書」「賃借人ごとの賃借地の範囲の面積及び境界を確認できる実測図」等の提出を要します。
土地賃貸借契約書の条項に国にとって不利な特約等がある場合は、その条項を削除又は変更しないと、物納は認められません。地代が一定水準以下の場合も物納は認められません。このように底地の物納は賃借人の協力を必要とする要件が多くあります。したがって、一般の土地に比べて早めの準備が求められます。
借地権が未登記のとき、地主の相続人に対抗できるか
例:借地上の建物に居住していますが、地主が亡くなったため、賃借中の土地を地主の長男が相続しました。
その長男が言うには、私どもの借地権は登記されておらず、また、建物も未登記なので、土地を明け渡して欲しいとのことです。
私どもは本当に土地を明け渡して、出ていかなければならないのでしょうか。
Ansewer
借地権は登記がなければ第三者に対抗することはできません。仮に借地権が未登記であっても、借地上の建物が登記されていれば、いわば代用的な対抗要件として認められます(借地借家法第10条第1項及び旧建物保護法第1条)。
つまり、逆に言えば、借地権と建物がともに未登記の場合は、第三者に対抗できないということになります。
ただし、ここでいう「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者です。借地権を設定した地主は当事者ですし、その相続人は包括承継人です。したがって、地主の相続人である長男には借地権及び建物が未登記であっても対抗することができますので、土地を明け渡す必要はありません。
Q:借地上の建物を建て替えるとき、地主の承諾が必要か。
その場合、建替え(増改築)承諾料は?
例:借地上の建物が老朽化したため、建替えを計画しています。地主に相談したら、建替え承諾料を要求されました。
支払わなければならないでしょうか。無断で建て替えたら、どうなりますか。
Ansewer
借地上の建物の建替えは、「建物の増改築」にあたる場合と、「借地条件の変更」にあたる場合とに分けられます。どのように異なるかは、次の通りです。
①建物の増改築によるもの
契約書に定められた借地条件を変更しないで行う建替え。契約書に非堅固な建物(木造等)を建てる借地条件とな
っており、その条件に合った建物に建替える場合など。
②借地条件の変更によるもの
契約書に定められた借地条件を変更して行う建替え。契約書には非堅固な建物を建てる借地条件になっているが、堅固な建物(鉄骨造等)に建替える場合や、建物の用途の変更(居住用から事業用などに)を伴う建替えを行う場合など。
①の増改築の場合、借地契約に増改築を制限する特約がなければ、地主の承諾を必要としません。承諾が必要でない以上、承諾料を支払う必要もありません。
しかし、借地契約に増改築を制限する特約が定められているときは、地主の承諾を得なければなりません。無断で増改築すると、借地契約を解除されることがあります。
②の借地条件の変更の場合は、そもそも借地契約と異なる建物を建てることになりますので、地主の承諾を得なければなりません。無断で建替えると、契約違反となり、契約を解除される恐れがあります。
いずれの場合も、地主は承諾に応じる条件として、まず承諾料を要求します。
地主が承諾に応じない場合や、承諾料が高過ぎて話し合いがつかいないときは、裁判所に地主に代わる許可を求
めることができます(旧借地法第8条2項2号、借地借家法第17条2項)。
しかし、裁判所が許可をするときは、当事者の利益の衡平を図るために必要と認められるときは財産上の給付(つまり承諾料のこと)を命じることができるとされています(旧借地法第8条2項3号、借地借家法第17条3項)。
したがって、地主から承諾を得るためには、法外な金額でない限り、承諾料を支払うのは仕方がないと思います。
Q:建物の滅失により借地権は消滅するか
例:母が所有していた借地上の建物が火事により全焼しました。地主は建物がなくなったのだから、借地権も消滅したといっています。本当にそうなのでしょうか。
Ansewer
建物が地震、火事、水害などによる事故や天災により倒壊、消失した場合や、人為的な取り壊しにより解体した場合などを「滅失」といいます。これに対して、建物が耐用年数の経過により腐食、老朽化し、その機能を失った状態を「朽廃」といい、この両者(「滅失」と「朽廃」)は区分されます。ご質問のケースは「滅失」に該当します。
借地上の建物が借地権の存続期間満了前に滅失した場合、借地権がどうなるかですが、基本的に借地権は建物の滅失によって消滅することはありません。
借地法は、法定存続期間の満了前に建物が朽廃したときは借地権が消滅するとしていますが(2条1項但書)、滅失の場合についてはそのような規定をしていません。また、借地借家法は朽廃の場合についてすら、借地権の消滅について規定していません。
ただし、存続期間満了時に建物が存在しない場合は、借地権者からの更新請求による更新は認められません(借地法第4条第1項、借地借家法第5条第1項)。
Q:建物の軽微な改修でも地主の承諾が必要か
例:借地上の建物が最近雨漏りするようになったので、修繕したいと考えています。ところが、土地賃貸借契約書には建物の無断増改築を禁止する旨の特約が記載されています。この場合も地主の承諾が必要でしょうか。
Ansewer
借地上の建物の構造や規模等は、借地権の存続期間や建物の買取り請求がなされた場合の価格等に影響しますので、地主が増改築禁止の特約を設けることは一定の範囲で有効と言えます。ただし、建物自体は借地人の所有物ですので、経年による劣化に応じて必要な修繕を加えることは建物の所有者たる借地人の当然の権利であり、雨漏りの補修もこれに該当すると言えます。このような建物の維持保存のために通常期待しうべき程度の補修まで禁止する特約は無効と言えますので、地主の承諾は不要と考えて良いと思います。
Q:借地権者と借地上の建物の名義人が異なる場合の借地権の対抗力
例:建物が登記してあれば借地権の対抗力が認められると聞いています。現在の借地上の建物は父の名義なのですが、私名義の建物に建て替えても、対抗力に問題ないでしょうか。
Ansewer
質問のようなケース、つまり、借地権者は父だが、建物の所有名義は息子というように、借地権者と借地上の建物の所有名義人が異なるという例は少なからずあります。このような場合にも借地権の対抗力が認められるかつきましては肯定説、否定説の両説がありますが、判例を見る限りは否定的に考えた方がよいといえます。下級審の判例では子や母の所有名義でも対抗力が認められたものもありますが、最高裁の判例ではほとんどが「親族名義の建物登記では借地権の対抗力は認められない」という判断が示されています。
Q:借地権の更新料は支払う必要があるか
例:現在借地上の建物に居住中で、土地賃貸借の契約期間が2か月後に満了になります。地主から契約を更新する場合は更新料を支払うように要求されています。更新料は支払わなければならないのでしょうか?
Ansewer
更新料の授受は、社会の慣行の中から生まれてきたもので、特に法律的な規定はありません。借地契約の期間が満了しても、借地人が更新を希望し、地主に更新を拒絶する正当な事由がなければ、契約は更新されます。したがって、更新料の授受は必要ないようにも思われるのですが、現実には、都心部とその周辺地域においては、かなりひろく更新料の授受が行われています。
では、ご質問のケースのように実際に更新の時期が来て、地主から更新料を請求された場合にどうしたらよいかです。
地主が更新料を請求できるのは、当事者(地主と借地人)間で更新料支払いの合意がある場合か(契約書に更新料支払いの条項がなくても、過去に更新料授受の事実があれば、更新時に更新料の支払いがなされるという合意が当事者間で形成されていたとみなされる可能性もあります)、あるいはその地方に更新料支払いの慣習ないし慣習法(これを認めた判決はほとんどありません)がある場合とされています。
では、その2つがないケース、つまり契約書に更新料のことが明記されておらず(或いはそもそも契約書がない)、その地方に更新料支払いの慣習ないし慣習法がない場合に、どうしたらよいかです。
法的な根拠はないのですから、支払いを拒否することはできます。
ただし、借地契約の開始時に権利金等の一時金の授受がなく、地代が一般的な水準であるような場合は、ある程度の金額の更新料は支払っても仕方がないようにも思います。それは次の理由によります。
借地権の価格は、一般的にその土地の更地価格に借地権割合(一応国税庁が公表する借地権割合を目安とします。それに拘束されるわけではありませんが・・・)を乗じて求めます。すなわち、坪100万円の土地で、その地域の借地権割合が60%であれば、借地権の価格は一応坪60万円ということになります(借地権単独でこの価格で売却できるかは別ですが)。つまり、地主よりも借地権者の方が大きな権利(財産的価値)を有していることになります。土地を借りるときに借地権者が権利金等の名目で借地権相当額(上記の場合は坪60万円)を地主に支払ったのであれば、それは当然のことですが、もし、そうでなければ、借地権者の借り得ということになります。いつの間にか60%の権利が地主から借地権者に移転しているのですから。また、借地権の地代は一般的に低く、貸地の収益性は他の不動産投資に比べて決して高くありません。地主側からすれば、こうした貸し損や収益性の低さを補填する意味を込めて更新料を請求していると言えます。
このような経緯を踏まえて、借地権者と地主の利益の衡平を考えますと、ある程度の額の更新料の授受は仕方がないように思います。
Q:借地権を譲渡するときに地主の承諾は必要か。
その場合、譲渡承諾料を支払わなければならないか?
例:借地権を他人に売却したいので、地主にその承諾を求めました。すると地主は承諾する代わりに承諾料を支払うように要求して来ました。支払わなければならないでしょうか。
Ansewer
借地権には地上権と賃借権の2種類があります。地上権の場合は、譲渡するのに地主の承諾を必要としません。したがって、承諾料も支払う必要はありません。
ところが、賃借権の場合は、民法の規定により、他人に売却や転貸(又貸し)をするときは賃貸人(地主)の承諾を受けなければなりません(民法612条1項)。地主の承諾を得ずに無断で売却や転貸をすると、契約を解除されることがあります(同条2項)。
地主は承諾を与えるとき、その条件として、ほとんどの場合、金銭を要求します。この金銭のことを一般的に「譲渡承諾料」あるいは「名義書換料」「名義変更料」などと呼びます。
では、地主から要求されたらこれらの金銭を支払わなければならないかですが、結論から言いますと、一定の範囲内の金額であれば、支払わざるを得ないと思います。
何故ならば、地主が借地権の売却を承諾しないときは、借地権者は裁判所に地主に代わる許可を求めることができるのですが、旧借地法および借地借家法において裁判所が賃借権譲渡の許可を与える場合は、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは財産上の給付を命じることができるとされているからです(旧借地法第9条第2項、借地借家法第19条第1項)。この財産上の給付が承諾料ということになります。
では、この承諾料とはどのような性格のものなのでしょうか。諸説ありますが、次の考え方は意外と的を得ているように思います。
「地主さんはあなたが毎月地代をきちんと支払ってくれ、契約の条項も守ってくれる善良な人だから、大切な土地を貸しています。ところが、もし借主が他の人に代わったとして、その人があなたと同じような善良な借地人さんかどうか分かりません。」
譲渡承諾料(名義書換料・名義変更料)とは、そのように地主が抱く将来不安に対する代償と言えます。
裁判所に地主に代わる許可を求めても、ほとんどの場合、承諾料の支払が命じられます。地主は承諾料を支払わなければ、まず承諾を認めません。したがって、結局のところ譲渡承諾料(名義書換料・名義変更料)を支払わざるを得ないことになります。
Q:借地権は売却できるか?売却できるとしたら借地権の価格は?
例:父が死亡したため、建物を相続しました。自分は別の所に自宅を所有しているので、相続した建物は売却しようと考えています。ところが、この建物は借地上に建っています。借地権付きの建物は売却できるでしょうか。売却できるとしたら、価格はどのように考えたらよいのでしょうか。
Ansewer
借地権の取引慣行のある地域であれば、基本的に借地権の売却は可能です。価格は更地価格に借地権割合を乗じて求めます。更地価格は一般的には取引事例や地価公示等を参考にして求めます。
借地権割合は一応国税庁発表の路線価に付せられたものを目安にしますが、実際に取引される借地権割合は国税庁発表のものより小さくなる傾向にあります。これは都心部よりも郊外に行くほど顕著です。また、地価の高い地域の方が、借地権の希少性が高まるので、取引し易くなる(売却し易くなる)傾向にあるといえます。
ただ、現実的には所有権に比べると、借地権の売却は容易ではありません。所有権に比べて、利用・処分上さまざまな制約がありますし、購入資金を調達するときに銀行融資が受けにくいなどの問題があるからです。
また、借地権を売却するときは、ほとんどの場合に地主の承諾を必要としますので、売却のためのコストとして譲渡承諾料を考慮する必要があります。
Q:借地権の地代はどのようにして求めるのか
例:何年間も地代を据え置いたまま土地を貸しているので、この際少し値上げしたいと考えています。いわゆる適正な地代の求め方というのはあるのでしょうか。
Ansewer
地代を算定する方法はいろいろあります。主なものとして、賃貸事例比較法(近隣の類似する貸地の地代と比較して求める方法)、利回り法(更地価格に対する年額地代の割合で求める方法)、公課倍率法(固定資産税・都市計画税に対する倍率で求める方法)などがあります。
また、底地が相続税の物納財産として国に収納されるときの、国の貸付料算定基準を参考にする方法もあります。
Q:旧借地法適用の借地契約を新法適用の借地契約に切り替えることは可能か
例:旧法の借地法の時代に借地契約を締結し、何度か更新を繰り返してきました。このたび、更新の時期が来たため、地主と借地人との合意により、更新後の契約は新法の規定によるものとしたいと思うのですが、問題はないでしょうか。
Ansewer
平成4年に新法である借地借家法が施行されましたが、それ以前から設定されている借地権については、旧法である借地法の規定が適用され、これは更新後においても同じです。ご質問のようなケースは、地主と借地人が真実自由な意思に基づき、従前の借地契約を解除して、新たに新法規定による借地契約を結び直そうとするのであれば、それを無効とする根拠はないようにも思えます。
ただ、旧法の一部は強行法規であり、賃貸借契約の重要な部分について、法に定めた条文に反する特約で借地人に不利益なものは無効とされています(借地法第11条)。例えば、更新後の借地権の存続期間は、旧法では堅固な建物の所有を目的とするものは30年、非堅固な建物の所有を目的とするものは20年が基準となるのに対して、新法は最初の更新が20年、その後の更新は10年が基準となりますので、これは借地人に不利益な特約と解せられ、無効になると思われます。形式上は従前の契約は合意解除となっていても、借地人が自分に不利益となる合意解除に実質的に応じるとは考えにくいため、結局、ご質問のようなケースでも、新法が旧法に抵触するような箇所については、なお旧法の規定が適用されるものと思われます。
Q:借地契約の存続期間を途過した場合、借地権はどうなるか
例:母は借地上の建物に一人で暮らしています。借地契約の期間が昨年で満了となっていましたが、地主が何も言ってこなかったため、特に更新等の手続きはせず、 現在もそこに住んでいます。もし、地主から契約期間が切れていることを理由に、土地の明け渡しを要求されたら、応じなければならないでしょうか。ちなみに 建物は木造で、平成2年に契約を更新し、契約期間は20年でした。
Answer
ご質問の借地契約は平成2年に更新されたとのことですので、旧法適用の借地権になります。旧法の借地権は、借地契約の存続期間が満了した後でも、借地権者 が土地の使用を継続し、それに対して地主が遅滞なく異議を述べなかったときは、借地契約は従前の契約と同一の条件により更新されたものとみなされます(借 地法第6条)。これを法定更新といいます。したがって、お母様は特段の事情がない限り、現在の住居に住み続けることができます。
貸地問題でお悩みの地主さんへ
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