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相続税の物納コンサルティング
平成18年度の税制改正で物納制度が大幅に改正されました。納税者にとっては以前よりも厳しくなった部分が多く、早めに準備しないと、物納で納税を完了するのは容易ではありません。
特に貸宅地(底地)のように他人の権利の目的となっている土地の物納は、できるかぎり相続開始前から準備をすすめておくべきです。
私どもは土地物納を円滑に完了するために、納税者の方や税理士先生のお手伝いを致します。
物納制度改正のポイント
1、物納不適格財産と物納劣後財産の明確化

改正前も通達等により、物納不適格財産はある程度明確になっていましたが、
平成18年の改正では、法令により明文化されました。
そして、新たに「他に物納適格財産がない場合に限り物納を認める財産」として「物納劣後財産」が設定されました。
該当する財産は、主に次のような財産です(不動産の例示)。
「物納不適格財産」
- 抵当権が設定されている不動産
- 境界が不明確な土地等
- 借地権者が不明な貸地
- 他の土地に囲まれて公道に通じない土地で、民法上の通行権を有しないもの
- 他の財産と一体で管理処分される財産で、単独で処分することが不適当な財産
- 敷金等の債務を国が負担しなければならなくなる貸地・貸家等
- 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産
「物納劣後財産」
- 市街化調整区域内の土地
- 接道条件を充足していない土地(いわゆる無道路地)
- 法令の規定に違反して建築した建物及びその敷地
- 地上権・永小作権その他用益権の設定されている土地
- 都市計画法に基づく開発許可が得られない道路条件の土地
- 土地区画整理事業の施行地内にある土地で、仮換地が指定されていないもの
- 生産緑地の指定を受けている農地及び農業振興地域内の農地
これらの財産を物納申請しても、他に物納適格財産があると、物納を却下されます。
却下された場合は、却下の日から20日以内であれば、一度に限り物納の再申請ができます。
これらの財産に該当しないからといって「即物納OK」というわけではありません。
収納のための条件を全て満たして、初めて物納OKとなります。
2、物納手続きの明確化
土地物納の場合、測量図、境界確認書等の書類は、原則として物納申請時に全て提出する必要があります。
書類に不備があると、税務署長から補正又は提出を求められ、請求後20日以内にそれらがなされないと、物納申請を取り下げたものとみなされます。
やむを得ない事情があるときは延長が認められますが、その場合一度につき3か月まで、最大で1年しか認められません。(これらの期間を「書類提出期限延長届出期間」といいます。)
今までみたいに、物納申請時には申請書と土地所在図くらいを提出しておけばいいと呑気に構えていると、大変なことになります。
3、審査期間の法定化
物納申請期限から原則として3か月以内に許可又は却下の結論を出す(物納財産が多数の場合は6か月以内)。
この期間内に許可又は却下しない場合は、物納を許可したものとみなされます。 改正前は、物納申請から収納許可までの期間に関して明確な定めがありませんでした。
そのため、物納財産によっては、申請から収納に至るまでの期間が5年あるいは10年に及ぶなどという例も見受けられました。
物納申請財産が収納されなければ、納税は完了しませんので、その間の納税者(物納申請者)の精神的な苦痛はかなり大きなものでした。
その点、今回の改正により、物納申請財産の収納までの期間が明確になりましたので、納税者の精神的な苦痛は大幅に軽減されることになると思います。
ただし、この期間(3か月の審査期間)には前2の「書類提出期限延長届出期間」や、物納申請財産を収納させるために納税者が行う必要な措置(物納条件整理)に係る期間は含まれません。
4、延納から物納への変更が可能に
延納が困難になった場合、申告期限から10年以内に限り、物納への変更が認められるようになりました。
これは今回の改正の中でも、納税者にとって大変に重要な改正の一つといえます。 従来は「原則から例外への変更」ということで、延納から物納への変更は認められていませんでした。
そのため、相続税申告時に納税方法の選択を誤ると、後に納税困難に陥るというケースが見受けられ、特に平成4~5年頃に多発しました。
この時は納税者を救済するため、期間限定で1度に限り延納から物納への変更を認める特例物納が実施されましたが、今回は制度として「延納から物納への変更」が認められるようになりました。
最初に納税方法の選択を誤っても、後でやり直しができるという意味で、納税者にとってはプラス面の多い改正です。
ただし、留意すべき点がいくつかあります。特に重要なのは次の2点です。
- 資力の状況の変化等により延納が困難になった場合に認められるものであり、納税者の勝手な理由で変更できるものではないこと。
- 収納価額が物納申請時の価額であること。
2、については、物納財産の収納価額は原則は課税価格計算の基礎となった評価額です。
これは近年のように地価下落が長く続いた時期には納税者にとっては大きなメリットでした。なにしろ物納申請財産の価額が収納までの間にどんなに下がっても、その下落リスクは国が取ってくれるわけですから。
ところが延納から物納に変更した場合は、物納申請財産の収納価額は物納申請時(つまり物納に変更した時)の価額になります。つまり値下がりしたら、下がった分は収納価額から引かれてしまうことになります。
下落はだいぶ収まってきたとはいえ、都心の一部を除いて地価はまだまだ弱含みです。
「いつでも物納に変更できるから」とたかを括っていると、物納では税額に足りないということになります。
5、物納にも利子税がかかるように
延納よりも高い利子税率ということも要注意です。
物納により納付が完了するまでの期間に利子税がかかるようになりました。
土地を物納する場合に必要な境界確認書や工作物の確認書等を揃えるには隣接地主等の第三者の協力が不可欠です。また、貸宅地の場合は、土地賃貸借契約書の整備や地代の値上げには借地権者の協力が不可欠です。
物納申請時にこれらの書類が全て揃っていれば問題ありませんが、物納申請後に揃えようとすると、その期間は利子税が課されるようになりました。
隣接地主や借地権者が協力的なら良いですが、そうでなかったら大変です。物納申請後、最大1年が経過しても、それらの書類を揃えられなかったら、物納申請が却下されるのは前記のとおりですが、仮にやっとの思いで揃えられたとしても、あまり時間がかかってしまうと、利子税の負担が大きくなります。
利子税の割合は「年7.3%」と「前年の11月30日の公定歩合+4.0%」のいずれか低い割合(平成19年中の割合は4.4%)となっています。
延納の場合の利子税割合は特例割合の適用により低めに抑えられていますが、物納の場合は特例割合の適用がありませんので、要注意です。
審査期間は利子税が免除されますが、利子税は物納できませんので、充分な注意が必要です。
弊社のコンサルティング業務

業務内容
- 物納適格財産の調査・選定
- 納税シフトの設計(遺したい財産を遺すための納税シフトの組み立て)
- 税務署提出書類の整備
(例)「工作物に関する確認書」「埋設物がない旨の確認書」「下水道受益者負担金確認書」
「樹木の放棄書」「敷金等に関する確認書」等 ※貸宅地(底地)の場合
「土地賃貸借契約書」「貸借地の境界に関する確認書」の整備。地代の値上げ折衝。 - その他物納条件整備に関する全ての事項
- 「補完等の通知書」に基づく補完事項の整備
- 税務署等関係当局との協議
- 隣接地主等権利関係者との折衝
業務報酬
第三者の権利が付着した不動産(貸宅地等) | →相続税評価額の2.5%(別途消費税) |
その他の不動産(自用地等) | →相続税評価額の1.5%(別途消費税) |
無料相談
相続(予定)財産の物納適否のおおまかな判断や、条件整備のためのご提案は原則無料で行います。
業務対応可能地域
原則として、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県ですが、交通費等をご負担いただくことにより、他地域の対応も可能です。
また、業務量や財産の規模等により考慮いたしますので、ご相談下さい。
物納は早めの準備が必要です。
相続が開始してから準備したのでは、申告期限までに間に合わなくなる可能性があります。
当社にご相談いただければ、相続予定財産の物納適否のおおまかな判断や、条件整備のためのご提案は原則無料で行います。
貸宅地(底地)の物納条件整備は特に大変です
貸宅地も原則として物納は可能です。
「他の相続財産に更地があれば、国は更地を要求する」という誤解が一部にあるようですが、条件さえ満たせば、貸宅地も物納可能です。
但し、貸宅地は更地と違い、借地権という第三者権利が付着していますので、いろいろ条件がつきます。
最低限満たさなければならない条件として、次のようなことがあります。

- 借地権の範囲が明確になっていること。
- 借地権者が明確になっていること。
- 地代が低廉でないこと。
- 借地権者と係争中でないこと。
- 契約内容が書面にて明確になっていること。
- 社会通念に照らし、契約内容が貸主に著しく不利でないこと。
- 敷金、保証金等の債務がないこと。
物納制度の概要
物納を選択できる大前提
金銭納付が困難なこと
現金で相続税の納付が可能な場合は認められません。相続財産の中に現預金がある場合は勿論のこと、納税者本人がもともと持っている財産の中にそのようなものがある場合も原則物納は認められません。
延納によっても金銭納付が困難な場合
延納とは相続税の分割払いのことです。相続税申告時に一括にて現金納付することが困難であっても、分割払いなら可能な収益資産が相続財産の中にあったり、納税者本人に分割払いが可能な収入がある場合も原則物納は認められません。
物納に充てることのできる財産の種類及び順位
物納に充てることの出来る財産は、納付すべき相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、次表に挙げる財産で、その所在が日本国内にあるものに限られます。

第1順位 | 国債、地方債、不動産、船舶 |
第2順位 | 社債、株式 |
第3順位 | 動産 |
物納申請の提出期限
物納申請書は、相続税の納期限《通常相続発生翌日から10か月以内)又は物納すべき日までに、
納税地の所轄税務署に提出になければなりません。
収納価額
原則として、相続税を計算する際に基礎となったその財産の評価額が収納価額となります。
ただし、延納から物納に変更した場合は、物納申請時の価額が収納価額となります。